理想の情報のカリキュラムでも数学の生徒実態を考えておかないと全てがぶち壊し

適当に情報の指導要領についてかきなぐっていくシリーズである。

プログラミングとそれとセットになるモデリングの部分のかき回しが、思ってたより逃げられない感じのかき回しでびびった話に関連してのことである。(指導要領の本文をPDFから持ってくると、制御文字がトラブルを引き起こすので貼らない。)

この書き回しだと、情報で数理モデルを扱わざるを得ない感じである。私は、もう少しふわっとした書き回しがくると思っていた。よって、大変な学校ではふわっとした書き回しをうまく使って逃げれば良いと思っていた。しかし、この書き回しだと逃げ方が限定されそうであるような気がしてきた。

ここまで過激にやられると、逆に工夫してどうこうしようという人はいなくなるでしょう。そうなると、結局は、超優しい教科書が出てきて、それを何も考えずになぞり「やりました」ということになるところに落ち着きそうである。ただ、大人のメンツの関係上、超優しい教科書レベルが使えないケースもありそうで。その状況では大変でしょうね・・・

2年生でやるならすばらしいカリキュラムだと思います

パブコメの案の、情報のカリキュラム自体は私は良いと思っている。どの単元も私は好きで教えたい単元である。現状でも、ネタを拾ってきて次の情報で入る話に近い話は色々としたことがある。しかし、現状では「わけのわからない高度なことをやっている」とか「これは情報ではない」などと不勉強な人々(教師も生徒も)に錯覚されることがたまにあった。その現状が解消されるだけでうれしい話である。

ただし、予備知識と能力がない段階でこれをやると最悪のカリキュラムになる。このカリキュラム、2年生で教えるのであれば素晴らしいと思う。色々とやりたいことがありすぎる。しかし、1年でやらされるケースもそれなりに出てきそうである。それがいかにあほらしいことか。特に、数学の準備なしでこれを教えさせられることはありえない。それだけは強い問題意識があるので、その点についてばかばかに批判する。

逃げ道のない書き回しなので

数学が問題になるのは、(3)のコンピュータとプログラミングの単元である。ここは、ふわっとプログラミングではなくて、アルゴリズム数理モデルという理系プログラミングをやれという指定にしか私には読めなかった。

もちろん、理系風のことをやるとはいえ、必履修で先行科目の規定や履修年次の規定がない以上は、使う数学は厳密に中学範囲に制限されるはずである。まあ算数や中学数学でも十分にしんどいということは置いておこう。

プログラミング、というだけであれば、数1Aは逃げられるプログミングはいくらでも存在した。大変な学校は、まあうまくやって逃げるか、とも考えていた。しかし、ここでは「社会や自然などにおける事象をモデル化する方法」となっている。こうなると、数理モデルを避けにくい。

数学っぽい話を工学部系の人がするときに「この程度は数学でないから難しく無い。」とよくいう。しかし、これは見ているレベルが違う。IF関数で不等号が出てくるだけでレベルでも十分に「ばりばりに数学」という環境も、世の中に存在する。

コンピュータでふわっとモデルいじるだけだから、数学関係ない、という言い訳も普通なら通る。しかし、ここでは留意事項として、手で色々とやって比べろと書いてあるのである。手で数理モデルを操作するということは、数学そのものの営みである。それも、生徒が数学の時間に大の苦手な文章題を、さらにややこしくした文章題である。

はっきりいって、理科で物理基礎を必履修にされされている気分である。

実現性を考慮せずに理想を語るのは無責任では・・・

別に数1Aの後でやって良いなら何の問題もないが

数1Aをやった後で数理モデルを扱うのであれば何の問題もない。よって、大変な学校は2年でやれ、と言いたい。数研の高等学校以上が使えない学校はそうしろと特に言いたい。大変でない学校でも、そのほうがこの内容がよく理解できると思う。

しかし、大変な学校に限って、色々と大人の事情で情報の必履修が1年にくるのである。また、数研の高等学校以上が使える学校は、理科基礎を2つ1年生でやる関係で、結果的に情報が2年生となっているので何も問題はおこらない。皮肉な話である。

過激派は生徒が文章題が苦手って知ってる?

情報の過激派な人は、1年生でこれをやらせるべきだといっている。しかし、数1Aの教科書内容と生徒の状況知ってる?と言いたい。だいたい、数学教師ですらまともに文章題を教えきれていない状況である。数学的活動もできているとはいえない状況なわけだし。それにも関わらず、家庭学習・入試・単位数・教員の質のどれについても数学より条件の悪い情報で、それより難しいことができる、というのはなぜ言えるのだろうか。

もはや、情報関係者は意地になっているとしか思えない。情報教員の地位向上のためと称して、わけのわからないことをやろうというところから話が始まっている。要は生徒にわからないことをやることで、他教科の教員や生徒になめられない状況を作り出したいと。そうとしか思えない。

実戦投入の前に自分たちの大学の文系で試せ

パブコメの案の内容、まずは、ある一定以下の水準の大学の文系学生にやらせてみろと言いたい。それでこなせることが実証されてから導入しろと言いたい。高校はそれ以上に大変な環境すらあるのだから。

はっきりいって、このカリキュラム大学入試偏差値65以上の生徒のみを集めた学校のことしか見てないだろ?と言いたい。

工夫すればできるという主張も滅びろ

数学の準備のなさを避けるための工夫は、授業時間外にやることになる。情報の非常勤にそれやらせて良いのだろうか?ワーキングで好き放題言った人々が、責任を持っていかなる層でも通用する教材を全部作成してくれるならやってくれるなら良い。しかし、そんなことは絶対にありえない。

その工夫によって生徒に何かが身についてくれるなら、百歩譲って何かやっても良い。しかし、どうせアリバイ作りにしかならないのである。そんなことを無償奉仕させて良いのか?とにかく、無茶を通すための工夫というのは、労力だけ消費して何も生み出さないのである。

指導要領を熟読していない人が色々言い出すと面倒

指導要領は、色々と逃げ道がある。「生徒の実態に応じて・・・」とか「指導の順序は入れ替えても良い」などというお助け規定もある。それをフル活用すれば、まあなんとかはごまかせる。

数1Aの進度を考えると

超大変学校でないが中堅進学校でもないケースを考える。数理モデルの単元を相手にしようと思ったら、数IAは2次関数の最大・最小、数Aは場合の数・確率は終わっていると選択肢が広がる。普通にいけば、2学期中間まででこれらの単元は終わるはずである。

数I側では、2学期期末の入りで2次関数の最大・最小をやったこともある。しかし、これは遅いケースで普通に考えれば2学期中間で2次関数の最大・最小は終わる。

数A側は現状と少し変わってくるかもしれない。というのも、今度は数Aは2単位で2単元である。内容を考えると、場合の数・確率より幾何のほうが少ないので、場合の数・確率を1.2単位から1.5単位ぐらいかけてやる進行が考えれらる。そうなると、2学期期末まで確率を持ち越す環境(特に条件付き確率)もでてきてもおかしくない。

モデル化の単元は、指導要領の順序でいけば、(3)であることと、(1)の単元は導入単元であることを考えることから、普通にやると2学期にの頭にはこの単元に突入することになる。しかし、これは避けたい。詳細はまた別途書くが、うまく(4)のネットワークやデータの活用をうまく先に消化しながら数学側の準備を待って、この単元に入りたい。

しかし、後回しにもリミットがある。というのも、アルゴリズム数理モデルの単元の筆記試験は3学期に回したくないという制約があるからである。この単元でまともに筆記試験をやった場合、どう考えても欠点が続出である。年度末の土壇場になって単位不認定が続出か?とか、追指導か?などとういうのは精神衛生に良くない。

以上をふまえると、2学期にこの単元は扱う。最低限、筆記試験もする。しかし、数学側をぎりぎりまで待って単元には入る。このせめぎ合いは、非常に微妙な調整が必要とされることになりそうである。

情報の教員は情報に専念させろと言われているが・・・

数学の授業経験なしで現地調達方式はやりにくい

情報の授業をやる上で必要な数学は、現地調達方式をやれば良いという人がいるが何も見えてない。まず、2単位で生徒も興味関心もない、さっぱりできない状況で、数学の現地調達に付き合えるほど暇はない。そして、実際に学校で(できれば情報を教える勤務校で)数学を教えたことがなければ、生徒の数学理解の肌感覚なんかわからない。そのため、適切な現地調達方式での授業ができるとは思えない。

自分の場合は数学の授業をすることは重要な教材研究です

情報教員には、他の科目を教えさせずに情報に集中させろという言説が世間にはある。しかし、自分が新課程のこの内容を持つのであれば、自分が情報を教える学校で、自分で数1か数Aの授業を1クラスぐらいは(できれば両方)情報と同時に持ちたいと思う。数学をやることで得られた生徒理解がないと、授業が組み立てにくいからである。

数学の授業をやることによる生徒理解は、何時間の机上の教材研究よりも重要な情報である。少なくとも、TTが付けられる場合は、どちらかは数1Aの担当者に入って欲しいところである。

情報の授業をやっているだけで、アルゴリズム数理モデルの授業を展開するための生徒理解ができるというのはどう考えても無理筋の主張である。問題解決の単元や情報デザインをやっているときに、どうやったら生徒の数学的な状況が把握できるのだろうか?私の能力では無理です。

理想を掲げる前に現実に対処してくれ

数学を現地調達方式で教えるときも、色々と細心の注意を払う必要がある。

まず、生徒は初期学習に縛られるので、数学に迷惑をかけないようにしないとならない。この点は、数学教師対策も含めてのことである。情報の教師は数学の教師より地位が低くみられている。その上、俺様志向のプライドの高い(かつ実力のある人もいるんだな、これが。)人も多い。その状況では、何情報で適当なことを教えてくれたのだ、と言われてしまうと面倒なことになる。相当に気を使わなければならない。まだ、数学を同じ学校で教えて入れば対等の立場で話せるのでなんとかなる。しかし、そうでなければ悲惨である。

さらに、生徒が情報を飛び越えて数学に質問しにいくケースの対処も想定しておかなければならない。情報が非常勤である場合、試験前に数学の常勤に生徒が質問しにいくケースがは想定される。そのときに生徒がぼろくそに言ったとする。このとき、数学側が情報の非常勤を守ってくれるとはとても思えない。逆に情報の教師を攻撃してくれる可能性が高い。同時に数学を同時に教えていれば、この問題もかなり緩和できるのだが。。。。

大変な学校の場合はある意味情報だけで閉じる

1年は数Iでなく学校設定科目であるケースすらありえる。数Aなど当然なし。自分の場合はこのケースは楽勝である。逆に自分で全部教えてしまえば済むだけである。開き直って、必要な数学は普通に数学の授業をして教える。そういう学校では、変なマイルールでああだこうだいう数学の人など絶対にいない。ただ、数学免許なしの人にそれやらせるのかな・・・