数式の書かれたデータベースの本を入手することになってしまった

瀬戸先生の本を読んでいると,結局は増永先生の数式ばりばりの本を確認せざるを得なくなったという話。第2版をこの前捨てたのに(必要になったら第3版を買おうと思ってたので)。

自分で自然言語の説明を全て記号で考え直した

瀬戸先生の本を,第2正規系の説明から読んでいるときのこと。内容は知ってることなのに説明がしっくりこない。そこで,著者が使ってる言葉の定義を全部確認しておくかと戻ると,そこがもっと破綻していたと。

まず,言葉の定義を読んでると,理論の用語を自然言語で定義している。ただし,その定義とかその説明に出てくる用語の説明が少しおかしい。私の知ってる普通の数学と少し違うし,本の中のものに従うと色々と破綻してません?になる。

何度も好意的に解釈しようとするのだが,そもそもとして解釈が成立しない。最後は,書いてることを自分で数学記号に落として理解した。

色々読んでいると,必要もない不自然な説明もいくつかある。また,構成は明らかに増永先生の本と同じ。たぶん,増永先生の本を見ればわかるでしょう,という結論になり,本を買いに行くことになる。

破綻した説明を理解するのに1日が消えた

この本,致命的なセクションが少なくとも2つある。詳細は後日レビューする。現状は,理解で手一杯でアウトプットできる理解に到達していない。(何がおかしいかをパーツパーツで批判的に指摘できる理解まではしている。ただし,それを建設的批判として記述できるの理解に到達していない)

まず,リレーションのセクション。別にここが破綻していても実例で補えば良いのだが,最小ページ数で説明を突っ切っていくスタイルで説明されているため,例とか傍証で修正を試みることが難しい。

そして,とどめが第一正規系の説明。持ち出す必然性がない直積とべき集合を持ち出したあげく,両方とも説明が破綻している。別に第一正規系は飛ばせば良いのだが,初心者にその判断を求めるのは酷である。

集合の直積の定義が破綻気味とか,べき集合の定義が明らかに間違ってるとか,集合とその要素を混同した記述が多用されているとか,そんなの初心者に疑えというのかといった感じ。

元の増永先生の本にもこの2つの用語は出てきている。そして,元の本でも,この2つの集合を出すことの必然性は全く感じない。しかし,元の本の文脈だとわかりにくいが致命的な嘘というほどではない。また,例示の一つなので,少々破綻していても問題ない。

しかし,この本は元の本の文脈を全部ぶったぎり,かつ,説明の根幹として使ってるので破綻の影響が大きすぎると。

読み手が低学力なのが悪いとも言えるが

私が低学力なのが悪いという主張もありえる。しかし,低レベルの文系とはいえDB持ちで数学の教員免状も持っている。少なくとも想定読者ぐらいの知識はあると言って良いと思う。その人間が,これだけ理解にかかるのだから,普通の人はこれをまともに読めるとは思えない。

基礎が大事と言ってる人が基礎の説明で破綻するのは致命的

ものすごく良い本であるにも関わらず,超重要な基礎に見える箇所で破綻というのは,もったいなさすぎる。

最近,基礎理論は出題比率が減ってるので,別に破綻してても試験のテキストという意味では何ら問題はない。そんなとこの破綻で致命的に評価が下がりかねないというのは,非常に惜しい話である。

もっというと,不必要までに「数学的」を強調しておきながら,数学的に本を読んだ瞬間,その主張が数学的に記述されていないことが発覚する本を信用しろと言われても,普通は信用できない。

まあ,どこがどうなのかを色々と分析的に読んでみてそのうちレビューしようといった感じ。

瀬戸先生のネットワークのスペシャリストの本を買いに行ったものの,データベースの本の方が意外と良さそうだったので,買って帰ったのだが,こんな目に合うとは・・・・

数学的を随所で強調しなかったら傷が浅かったが

著者は数学の人ではないので,まあ多少は記述が数学的にちゃんとなってないのはしょうがないよね,と思いながら自分は読む。大学数学の訓練をそれなりに受けてないと,こういうものをきちんと書き切るのは難しいし。また,物を書くということの苦労もわからないでもないので。

ただ,そういうおおらかな感情で読んでいても,さすがに許容される破綻の度合いを越えてる。そのうえ,本文中で数学的とか理論的とかいうワードをしつこく強調されると,さすがに火に油が注がれることになる。そこまで数学と理論というなら,まずは自分がちゃんとできてることを記述で証明してもらえませんか?

自分は数学科原理主義にはついていきたくてもついていけないし,数学科の訓練を受けていないのでこの件はあまり何も言えない。ただ,数学原理主義的な書き方をする人が明らかに数学的に破綻していたら,さすがに生理的にいらいらくる。

自分の本で身を張って自分の主張を実践されるという皮肉な話

シリーズものは当たり外れがあるから中身をちゃんと読まずに信じてはいけない,とか,出版ビジネスの構造上,大学受験ほどのこの試験の参考書は質を担保できない,とか瀬戸先生は言っていた。それを改善するために自分の本を出したと思うのだが(だいたいはその意図は伝わってくるが),主張自体を自らの本で体を張って実証しなくても・・・・と思う。

今の自分の実感では,瀬戸先生のシリーズは

  • 支援士の本はものすごく良い(ただし応用情報用・他の難し目のテキストを読む前段の基礎テキストとして)
  • 応用情報の本は午前演習用の簡易辞書と午後問題の選択のために一冊手元に置いておくと良いかも。
  • ネットワークの本は微妙(まだ真剣には読んでない。ただ期待してた割にはでけっこうがっかり感はある。)
  • データベースの本は基礎理論の説明以外はものすごく良い。(応用情報・データベーススペシャリスト両方)

といった感じ。瀬戸先生のバックグラウンドからしても妥当な感じではあるけど。やっぱり人は得意なとこで仕事しないとな,と考えさせられた。