瀬戸先生のデータベース本のリレーション(関係)の説明を読んで思ったこと(1)
瀬戸美月「徹底攻略データベーススペシャリスト 令和3年度」(インプレス)のp44,p46.p47に書かれている例について,自分が理解したことをまとめておく。
説明を考えるにあたっては,この本が直接的に参照していると考えられる増永良文「リレーショナルデータベース入門[第3版]」(サイエンス社)のp28~p33も参照にしている。これが一番正確な説明なので,正確なことを知りたい読者はこれを参照すること。
瀬戸先生の本のドメインとリレーションの説明(定義)がしっくりこないので,そこの部分の自分なりの理解を書いたのが以下である。
なお,これを書いている人間はDB持ちではあるが,文系(数学の訓練を受けていない)かつ専門家でもなく業務等でも関わっていないので,そのあたりの信用度も踏まえて読むこと。
以下の説明について現時点で自覚している欠陥
- リレーションとリレーションスキーマの違いに触れてない
- 元の文章(数学的文章)では書いていない暗黙の言葉の意味を付加した説明をしている(特に「ドメイン」という単語に関連した部分。例えば「取りうる値」とか「考えたくない組」という単語は完全に主観。)。
- 表と集合の違いを強調していない。
- 集合・要素・直積・, {a,b}などの,数学的記法・用語の理解は前提
- 完成形を最初に提示してから,そこに戻っていく説明が論理的にはしっくりこない。これは批判されたらその通りですとしか言いようがない。
正確な理解が必要な場合は,増永先生の本のp28~p33を参照にすること。
表を前面に押し出したふわっとした説明
同じことを少しだけ集合の記号で書いた説明
瀬戸本とここの説明の主な違い
- 元の本は 「ドメインとは集合である」という(この表現・少し抵抗がある。特に「とは」という助詞。)色のない抽象的な定義に対して,ここでは集合に少し色を付けた書き方をした。
- 本文では文章と数式風の記法(定義のない独自記法も含む)のみで説明されている。これに対して,ここでは表と数学の記号の説明を2つに分離した。
- 数学の記法はできるだけ標準的な数学の記法に合わせた。
- 直積の説明(定義)は既知とした。特に,元の本の「直積とは」の説明自体が混乱を招く説明なのでそれはスキップ。また,数学用語に対して下手な説明(定義)をつけるとまずいので,わからない人は調べてくださいというスタンス。
良い本なのは良い本なんです
瀬戸先生の本のこの部分は,わかりにくく不正確としか言えない。せめてわかりやすさか正確さのどちらかは満たして欲しい。特に,ここは変なことをしてしまうとダメージが大きい。ここでリレーションという用語を定義して,後でずっとこの定義をずっと使い続けるので。
具体的な批判は建設的ではないので,自分の理解を書くことにした。これなら自分主語の文章だから誰かを傷つけるわけじゃないから良いでしょうと。
引き続き違和感の正体を検討中
この本の表現がどう微妙なのか?を一言一句添削を入れる感じで書くと,誹謗中傷と言われても仕方がないぐらいの量のものが書けそうなので控えた。
文章の勉強も兼ねて,違和感の正体をつかんだり,著者がどういう意図でこう書いてしまったのかとか,あとはどう直せばきれいに直せるのかとか,そういうことを何度も読み返して考えている。しかし,そのたびに疑問が積み重なる。また,助詞の使い方がおかしい箇所が多すぎるのも,ストレスがたまる要因である。
次回は,この本の理論の説明の微妙さに対する対処法と,その他思うことについて書く。