メインストリーム数学に数学活用が入ってくるのは助かる

あまり本業ではない、数学のパブコメ版指導要領について思うことつらつらである。

ベクトルについて燃えそうな記事を下書きに書いてしまった。よって、そちらはお蔵入りになりそうである。まずは、ここでは誰も興味を持っていない部分について書くことにする。

パブコメ案では、数A・数B・数Cに数学活用の内容が選択として入ってきた。これは、ただのアリバイで無駄だという意見もある。しかし、個人的にはこれは使いどころが色々とある良い話だと思う。こういう使い方ができればな、という空想を述べる。

なお、以下はアクロバティックな空想的解釈によるものである。こんな解釈をする人はいないので実際はこうはならないが。120%独断と主観である。妥当性もない。

受験を目指す学校以外で数Aや数Bを開講するとき

数Aでふんわり数学ができる

学力に関わらず、数Aまでは突っ切って授業をしてしまわないとならない場合は多い。このとき、数Aの一部として、ふんわり数学ができる選択肢があると大きい。ナンプレを堂々と堂々と数Aだと言い切れるのである。良いことである。現状、数学活用の教科書にナンプレはあったはずである(2社のどちらかの教科書にあったはずである)。

数Aの内容選択は、字面だけ見れば(1)から(3)までの内容の中から「適宜選択せよ」である。3つから2つ選べとはどこにも書かれていない。センターがそうなっていて、かつ、1単元が1単位分の内容だから多くの学校がそうしているだけである。別に全部の簡単な部分から引っ張って授業をしたとしても、学習指導要領状の字面はセーフである。確率はガチでやるとして、図形とふんわりを適度に混ぜるのは数学の体系性の趣旨に反するとは思えない。

確率・場合の数・図形のややこしくないとこ・数学活用っぽいところをかき集めて授業できれば、がちで数学やるより相当に楽である。現状、ときどきふんわり数学を混ぜることもある。しかし、自作するより教科書にあれば、そちらのほうが質が高いので使い勝手が良い。

数Bを合法的に就職数学対策として開講できそう

ベクトルとややこしい漸化式は大変なとこではやりにくい

大変な学校ではややこしい漸化式の存在(ややこしくない漸化式もあるが。そして、ややこしくない漸化式は情報をやる上では必要なので教えたい)とベクトルのせいで数Bを開講しにくいというのはある。数列の簡単なところ(等比・等差)・確率分布の簡単なところ(離散型確率変数まで)・数学と社会生活の簡単なところをうまくかき集めて授業ができるなら、2単位ぐらいの授業を成立させるのは楽勝である。

本来、数Bは他の数学との依存関係が薄い。大変な学校でも本来は数2より開講しやすいはずである。それにも関わらず多くの場合数2が開講されている。数Bが回避される一番の要因は、今の高校数学のベクトルは、学力が大変な学校での一斉授業には向かないということに尽きると思う。仮に、ベクトルを避けたとして、簡単な数列 + 確率分布の簡単な部分で2単位を持たせるのは大変である。そうなると、数Bを開講する勇気はない。

使い勝手が良い数列と数学と社会生活

就職数学を考えたとき、数列と数学と社会生活の2単元は使い勝手が良い。

就職数学としては、小学校レベルの数列はどうしてもやらせたい。特に、「数学能力だけはあるけど、受験に数学が必要ないからそういうクラスにいるだけ。」の生徒にはやらせたい。数Bは開講していないが、就職数学で数列が出てきたときに生徒に質問をされるケースは何度かあった。このようなとき、アドホックに対処することはできる。しかし、その問題だけを丸暗記という結果になりがちでその生徒に考え方が定着していかない。やはり、少し体系的に扱えるといいのに(理解できる能力もあるのだから)と思うわけである。

数学と社会生活は解釈とアレンジの仕方によっては、就職数学の文章題をカバーできる可能性がある。実用数学検定あたりとからめてやってしまうこともできる。要は、数学っぽい文章題は全部「日常や社会の事象を数学化したもの」なので合法である。

思考力・判断力で要求されている(ウ)や(エ)はきつそうだが、このあたりもまあ適当に一個大ネタをやってクリアすることにしよう。留意事項ががたがたと書かれているが、総則にあるはずの「生徒と学校の実態にあわせて趣旨を損なわない範囲で重点化した」と居直っておけばよさそう。

ITパスポートのストラテジ・マネジメント系の過去問も使えそうである。こちらの問題は問題によって数Bか数Cかどちらか微妙なものになる。アローダイアグラムとかは数Cかな・・・合法的にITパスポート対策もできそうである。

現状は2単位ガチかふんわりかなのでしんどい

過去の数学基礎の開講が嫌がられたのは(数学基礎を開講していた学校にいたこともあるが)「2単位全部ふんわり数学をやれ」だからであると思っている。試験を作るのも難しすぎる。逆に2単位がち数学をやるのもきつい。その落とし所が、学校設定をとって単純計算中心でやらせるということになっているのだと思う。

しかし、もし「1単位普通の数学の簡単なとこ・1単位はふんわり数学」という選択肢があれば、それなりにやっても良いと思う人はいるのではないか。1単位ぐらいふんわり数学を雑談的にやるのを嫌がる人はあまりいない。このときは、ふんわり数学最大の障害、評価の面倒さは、残りの1単位の普通の数学で筆記を作る、という手で解決できる。

今のままでは「それ以外」の進路を選択した中学数学をクリアできている人がかわいそう

就職数学系薄っぺらい数学のテキストの質が低いのを見ると、もっとましなものを使ってあげたいと思うのである。そして、そういうクラスでもクラスに1人や2人ぐらいは普通に中学数学や高校数学の大判ぐらいならこなせる生徒がいたりする。そういう人に小学校・中学校数学の復習だけで全ての時間を過ごす、ということを強いる学校設定はかわいそうすぎる。しかし、ガチ受験か中学数学かの2択しかない現状では、そうならざるを得ないケースが発生するのは仕方がない。

こういう科目で、レベルがあっていなくて暇にしている生徒を見ることもあった。そういう生徒が、大人の都合で分数計算や九九ばっかりやらされているのを見るのは悲しい。ましてや、すらすらできるのに「周りに合わせて態度良く授業を受けなさい。」的なことまで強要されているのを見ると、かわいそうすぎるのである。こういう人には、普通の数学も少しはやらせてあげたいと切に願うのである。

逆もある。すなわち、中途半端な進学校の文系生徒に数学活用のような世界を見せてあげられるという面である。授業中の暇つぶしでめくったぺらぺら教科書にそういう話があるだけでも良いことだと思っている。文系クラスだったら、新数Bの教科書にのっている最小二乗法の話は(留意事項のデータを関数として扱うことというのはそういう意味だと理解している)、試験後のだらだら系の1時間とかでやってあげても良いと思っている。

情報でモデリングを扱うための参考資料として

次期のBとCは、情報で扱うモデル化の前段となる数学に近い。全員が持っている数Bと数C(国立文系はCも範囲指定して欲しいと切に願っている)の教科書にこういう素材があると、情報で副教材を買わせることなく「もってこい」とできるのが大きい。

情報で、数学活用的なネタを取り上げようかと何度も思った。しかし、教材を作り上げるコストで断念したことが何度もある。数学活用の教科書を参考にしてそういう授業をやろうとしたことが何度もある。。。。数学的な部分だけでも、かっちりした手元が説明にあれば、残りの部分だけ自分で作れば良いのでコストが減って楽である。

特に、情報の2を(あえて検索にひっかかりにくくするためにわかりにくい書き方にしたが)開講するときには(そんなことがあるのか?)ありがたいと思う。データサイエンスやモデリングの理論的な部分のレクチャーを自力で全部作るのはしんどい。どうせ、情報の教科書の説明は工学部的な「こうなります」がぺらっと書かれるだけなのだから使い物にならないに決まってる。数式的な部分は、数学の教科書を見ながらレクチャーするか自習しろとするかして、じゃあ情報の授業はコンピュータでやってみようとできる。

数学がなんとなくからむ総合問題の対策

これも教師の質で左右される部分が大きい。教科書にそういう問題が乗っていれば、独習できる部分も増えてきて、教師の質の差が少しでも埋められるかもしれない。