数学教師の「コンピュータで簡単にできるから」って生徒にやらせてみて言ってる?

センター後継の数1Aの問題が、愛読している某blogで解説されていた。Tシャツの利益を最大化する問題である。(なので、問題そのものは適当にgoogleでみつけてください)

解説そのものは非常に良いものだった。計算はコンピュータがやってくれるのだから、モデル化そのものに取り組んでいくことが重要、とされていた。全く同感である。

それはさておき、数学の先生が「これぐらいコンピュータでできるから」ということは、普通レベルの高校の生徒には意外とできない。よって、「コンピュータでできるから」ということ数学の先生には、ぜひ一度目の前の生徒でコンピュータでやらせてみて、レポートを書いて欲しいといつも思っている。

以下、高級な授業力のない私が、もしExcelの授業でこの問題を扱うとか、モデル化とシミュレーションをやったふりをする題材としてこの問題を扱うとすると、これぐらいかな?ということを書いておく。

なお、花粉症でしんどいので、経済学っぽい人には読みにくい書き方を、特に断りを入れずに使って記事を書いていく。あくまで雰囲気を読み取ってほしいという記事である。

問題の概略

Tシャツの価格(以下ではこれをpとする)と予想需要量(以下ではこれをxとする)が与えられている。

  1. このデータを元にして需要関数を求める(需要関数は1次関数として良い)
  2. 1.で得られた需要関数を使って、収入を最大化する価格を求める。

(表が面倒なので箇条書きでデータを示す。pはTシャツの価格・xはアンケートより得たそのときの授業料。)

  • p=2000, x=50
  • p=1500, x=93
  • p=1000, x=154
  • p=500, x=200

なお、元の問題ではp=2000とp=500の値のみで需要関数の係数を決定している。また、変数をxとyで取っていることにも注意しておく。(価格はpriceのpでないと、自分が混乱するのでこうしている。)

とりあえず操作だけを情報の授業でやるなら

情報の授業で、とりあえず操作だけやってみました的な授業をするならこんな感じかなって手順。

  1. Excelでデータを入力して右クリックで回帰直線の式を出してプロット
  2. 適当な刻み幅で価格のリストを用意。
  3. 右のセルに回帰式を入れて予想数量を算出
  4. 価格 * 予想数量を隣の列に計算させる
  5. 目視・ソート・条件付き書式あたりのどれかで最大となる価格をみつけさせる

下に以上の手順を実行した画像を貼り付けた。

f:id:baruku07:20180405010246p:plain

色々とアラがある方法であることは承知している。しかし、初心者相手の場合、手計算風味を入れておいたほうが何をやっているかがわかりやすいと考えている。よって、まずはこれぐらいでまずはやらせてみる。

なお、N社の情報の科学の教科書にはこの程度の話はあることに注意しておく。

情報らしさを加えて授業するなら

問題文冒頭に書かれている需要調査のアンケートを作るところを具体的に作らせてみるというのが、ありえそうな展開である。あるいは、需要調査のアンケート方法の妥当性とかも適当に議論してみたいところである。

外野の声と戦わないとこの手の授業はできない(余談)

これぐらいの単純操作、生徒はさっとできると思うでしょ?普通。しかし、これができない。たったこれだけのことを授業でさせるだけでも大変。普通の高校では。

そして、コンピュータを使って授業をやらすと操作だけで手一杯になることが目に見えている。よって、外野から「ねらいがどうこう」「思考がどうこう」「活動あって学びなし」などと言われることは間違いない。よって、普通の人はこういうコンピュータを使う授業はやりたがらない。

私は「経験をしておくことそのものも大切」(がちなのは必要な人が大学でやればよろしい)なので、何言われてもやらすときめたらやらすけどね。。。

経済学系の人間としての雑感(余談)

この後の(3)として、業者に価格400で120枚Tシャツを発注したときの、利潤を最大にする価格を求めよという問題がある。

この(3)の問題、自分は中立的には解けない。経済学感覚が先に働いてしまう。要は業者に払ったコストはサンクコストなんだから最適化問題の考察要素から除外して考えて良い。よって、利潤最大化問題は元の収入最大化問題と基本的には等価。

よって、あとは120枚という制約がbindするかをみてやれば良い。しかし、こんなものは制約がbindしない問題を問題にするわけはない。よって、制約はbindしているに決まっている。そして、利潤関数は2次関数だからイレギュラーなこともおこってないはずだから、制約目一杯の120枚売る価格を求めれば良いに決まってるだろう、と考える。

もし数学の授業であったとしても、この問題を扱う以上は費用概念の説明はしたい。「定数項を引いているだけだからグラフがy軸方向に平行移動するだけだからxの挙動に影響がない」という言い方ではなく。

ただ、この(3)の問題は色々な意味で悪問だと思うな・・・・先に発注する数量決めておくって現実のシチュエーションではないでしょ?あくまで価格決めて需要量予想して、それでそれにあわせて発注する数量は決めるものじゃないですか。普通。