どのような順番でローマ字入力を練習させるか

情報の授業において、タイピング指導は通常は十分な時間が割けない。自分自身は色々とひねりだして時間を割く。身体に覚えさせることは、どうやったって時間がかかるものと考えているからである。「やっていたら慣れる」は、ある程度のスペックを持っている層にしか通用しない。「やっていたら慣れる」が通用するところまでは、時間をかけてシステマティックな練習をさせるしかない。

これに対して、知識を教える部分は工夫や家庭学習への丸投げで時間を切り詰められることができる。よって、知識の部分の時間を切り詰めてタイピングの時間を捻出している。しかし、潤沢に時間があるわけではない。

人間が説明するよりソフトの力を借りる方が効率的

タイピング指導の方法は色々とある。一斉に説明していくアプローチもある。私も最初はそういった方法で取り組もうとしていた。しかし、1対40のコンピュータ室で指示は簡単には通らない。画面で遮られているし、キーボードにも不慣れな状況でキーボードの説明を言葉でされてもわかるわけもない。

そうなると、指示無しでいけるシンプルな方法を取らざるを得ない。加えて、タイピング指導の際には、手の動きが適切でない人間を観察して指摘していくという作業もある。そのため、指示のコストを減らして観察にコストをかけたい。

指示をせずに練習をさせるには、タイピングソフトを用いるしかない。このとき、最初は手を正しく置く苦行系のものを使うことが重要である。私自身はmikatypeを基本的には使うことにしている。このソフト、練習は苦行なのだが、この通りにやれば正しい癖が身につく。使い方も特に説明不要。

a, i, u, e, oから覚えさして細かくきざむ

mikatypeはランダムに暗記していくアプローチを取っている。そのため、一定程度の効果が出るまで時間がかかる。これを待っている余裕がないことがある。そうなると、"a, i, u, e, o"を教えてとりあえず日本語を打たせていくアプローチを取らざるを得ない。

a, i, u, e, oだけ覚えさせて、あとは適当にやって覚えておけという環境ならこれ以上の議論は必要ない。しかし、そうではない場合、もう少しステップを刻んでいく必要がある。現在はこの順番でやらせるのが良いのかなと思っている。

  1. mikatypeのホームポジションをざらっとやらせる(ホームポジションに手を置かせる練習)
  2. 「あいうえお」を軽く練習
  3. 「かきくけこ」「さしすせそ」を追加(ここで時間をかけて「あ」「か」「さ」を完全習得させる)
  4. 「らりるれろ」「わをん」を追加(左手の上の段)
  5. 「はひふへほ」を追加
  6. 「たちつてと」「やゆよ」を追加
  7. 「だぢづでど」を追加(これを初期にしないのは単語が少ないから)
  8. 「まみむめも」を追加
  9. 「なにぬねの」を追加

打ちやすいところから攻めていく方針である。打ちにくいところは、最悪習得できなくても諦める。打ちにくいところに手を伸ばさせると、戻すのが難しいため余計な部分に気が散る。よって最初はそういう部分はやらない。打ちやすいところがすらすらになってから戻す練習はさせれば良い。

ここまでで、50音は片がつく。後は、もう覚えられる人はがんばって覚えてもらう。そうで無い人は諦めてもらう。濁音はまあ諦める。

なおホームポジションだけは、できれば完全暗記させたい。ホームポジションを暗記していない人は、ホームポジションの部分のキーをのぞくために指をずらす傾向があるからである。そうなくと、正しい運指が習得できなくなる。

刻むアプローチの利点

細かく刻むアプローチの良いところは、途中までしかできなくてもそれなりに何かが残ることである。このアプローチは、3.までの負担は軽い。しかし、その割には3.まで習得することの効果は大きい。

まず、a,i,u,e,oでだいたい半分のキーが肩がつく。そして、sとkを覚えていれば、下を見てキーを確認するときに指をずらさなくても済むようになるので随分楽になる。(いろんな意味で)まともな世界からは信じられないが、3.までを身につけてくれるだけでも随分助かるという環境もあるのである。

手元には、この方針でExcelシートに単語を列挙したものが存在している。一度、これで良いのか試して見たい。しかし、私の現状はmikatypeに十分な時間をかけられる環境であるため、このアプローチの実験ができない。少人数では試せそうだが。どこかで実験したいな。